意味を喪う

「意味をあたえる」のfktack( http://fktack.hatenablog.jp/ )の小説です。不定期に更新します。

余生(2)

※前回

余生(1) - 余生

 

 その日は仲間たちと花見をしようということになっており、しかし前日までは時間などの細かいことは全く決めていなかったので、私は夕方から夜にかけてやるものと思っていた。前日に私が何時にする? とメールをすると、お昼でいいんじゃないかと返事が来たのでそれじゃあ早すぎると返した。結局は午後3時からとなった。3時に現地で花見を開始するということは、2時に業務用スーパーで買い物をするために集合することになる。現地というのは友達のヤナカの実家であり、ヤナカは去年に父親を癌で亡くしており、今は母親と2人ぐらしである。桜は庭に咲いている、とヤナカはメールで伝えてきたが、私はヤナカとは小学時代からの幼馴染で、何度もヤナカの家に行ったことはあるが、庭に桜があるとは知らなかった。ヤナカの庭について言えば、親父さんが生きている頃は親父さんの車は日産で、庭にはカーポートが建てられ、その下には日産が駐車されていた。また、親父さんはゴルフが趣味で、加えて私たちが小学時代にはちょっとしたゴルフブームがあって、私たちは学校帰りに無断で道端の畑の桑の枝をへし折ってゴルフクラブに見たて、それでゴルフごっこをして遊んだ。球は普段は小石を使用したが、冬になれば氷がとれるので、それを手頃な大きさに割ると、小石よりも全然遠くまで飛んだ。ある日曜日にヤナカに呼ばれてヤナカの家に遊びにいくと、親父さんが庭の真ん中に穴を掘ってそこに細い木の棒を立て、さらには棒の先に手ぬぐいをくくりつけて旗に見たててカップとし、即席のゴルフコースを拵えてくれた。そして私たちは親父さんも交えて、本格的なゴルフごっこを楽しんだ。