意味を喪う

「意味をあたえる」のfktack( http://fktack.hatenablog.jp/ )の小説です。不定期に更新します。

余生(11)

※前回

余生(10) - 余生

 

 さっきからH・Kくんの話ばかりが続くので、バランスを取るために、彼が入る前のエピソードを挿入しようかと思ったが、それよりもいつのまにか月がかわり5月となり、気がかりなことが2つほどあるのでそちらを先に書く。この小説の冒頭で、私は花見に参加したと書いたがそれは4月6日の話で、そのときネモちゃんは幼稚園児ということだったが、実はその2日後の8日に入学式があり、ネモちゃんは小学生となった。小学生は班の人と歩いて学校へ行く。班の人とは自宅から100mくらい歩いた先の、ゴミ捨て場の前で7時25分に集合と決まっていたので、そこまでは私が送って行くことになった。ゴミ捨て場まではカーブが2つあり、さらに上り坂となっていて、ネモちゃんは

「どうして学校ではバスが迎えにこないのか」

 と文句を言った。私は

「確か、アメリカの学校はバスで行ってたと思う」

 と答えた。私は日本の治安の良さを暗につたえたくて言ったが、ネモちゃんにはわからなかった。

 坂を登り切ったところで黄緑色のジャンバーと帽子をかぶった人たちがいたので、私は

「よろしくお願いします」

 と挨拶をした。黄緑色の人は、児童の登下校をボランティアで見守る人で、仕事を定年退職した人が、自治体に登録をして行っている。その中には先月の夢で死んだオカダさんがいて、オカダさんは先に私の姿を認めたので

「1年生なんだ?」

 と声をかけてきた。私の方はそのときに初めて夢であったことに気づいたので驚き、驚く前は馴れ馴れしく声をかけてくる年寄りだなと思った。よく見たらオカダさんなので、

「オカダさんもくっついてってくれるんですか?」

 と私は急にフレンドリーな顔をして話しかけた。