意味を喪う

「意味をあたえる」のfktack( http://fktack.hatenablog.jp/ )の小説です。不定期に更新します。

余生(14)

※前回

余生(13) - 余生

 

 解決策として、妻は心電図の時間だけ車でネモちゃんを連れてって、終わったらすぐに帰ってくればいいのではないかと提案してきた。が、私は学校へ行って件の男の子に会ってしまったら、いやそれ以外のクラスメートでも、授業をサボっていると思われて、イジメを増長させるのではないかと恐れた。結局とりあえず学校へ電話してみるということになって、ベッドからは出た。妻はどちらにせよもう今日の自分の仕事は休むことに決めたので、浮き浮きしていた。調子に乗って私にも休んだら? と言ってきて、確かに私は朝から喉が痛くて、本当に休むに相応しい人間は実は私であるのだが、私は今日はちょうど梱包のローテーションに当たっていたので

「休まない」

 と答えた。それに今日は新人社員の研修の日でもあった。

 妻は急いで化粧をして、ゴミ捨て場にネモちゃんの欠席届を班長に届けに行った。欠席届を班長に渡すのは、私が小学校当時から全く変わっていないシステムだった。届の用紙自体も変わっていないのかもしれないが、私はもう覚えていない。私は小学校の頃は喘息で頻繁に休んでいたので途中で紙がなくなったので、母が同じくらいの大きさに紙を切って代用した。ネモちゃんがつけている1年生用の名札は私の頃のものと全く同じデザインで、クラスごとに色が異なるのだが私もネモちゃんと同じ1組で赤色だったので、懐かしかった。それから8時くらいになれば先生も出勤してくるだろうと予想をし、私の家には玄関に固定電話があるので、妻は8時になると玄関へ向かった。その頃にはネモちゃんも私服に着替え、Eテレの番組を見ながら、学校をサボることに対する後ろめたさは全くないらしく、朝ごはんを食べる私に体をくっつけてきた。