意味を喪う

「意味をあたえる」のfktack( http://fktack.hatenablog.jp/ )の小説です。不定期に更新します。

余生(25)

※前回

余生(24) - 余生

 

 私たちが総勢8名で雑巾を干していたのは夕方5時50分くらいで、これが済めばあとは日報をつけて帰るだけだった。派遣社員の2名については紙の出勤表に時刻を入れて、上司のサインをもらうだけだ。ところがPCは事務所には2台しかなく、しかもそのうちの1台は生産管理の人と兼用だったので、この時間帯はPCのまわりにみんなが集まって大変混雑する。PCを使う順番は勤続年数順と決まっており、待っている間に工程管理表を紐で綴ったり、明日の当番をカレンダーに書き込んだりする。B男はその作業は手伝わずに、自分の出勤表に夢中になっている。PCが2台ということはそれを載せるデスクも2台だから、B男は机を使うことができず、時刻を書く字がよれよれにならないよう壁にしっかりと紙を貼り付け、慎重な手つきでペンを擦り付けていく。その頃上司は外に出て煙草を吸っていて、ドアの隙間から臭いが事務所の中にまで漂ってくる。

 

 私はゴールデンウィーク前から風邪気味で喉が痛かった。そのため連休は家でごろごろしていたかったが、普段ならばネモちゃんが体に乗っかってきたりして、ちっとも休めない。しかし昼過ぎに義母が

「浅草に行く」

 と言い出し家族全員で出かけたので(義父は除く)私は家にひとりきりになったので、だいぶ休めた。その日の夜には久しぶりに会う友人と飲む約束をしており、この人は大学時代の1年先輩だが、二浪してから大学へ入ったから、実際は私よりも3歳年上だった。この人と話したことについてはまた後で触れるが、私は前日の時点ではとても喉が痛かったので、ドタキャンしようかとも思ったが、ずいぶん久しぶりに会うことになったし、場合によっては風邪を口実にして早めに切り上げるのも手かもしれないとか考えた。メールでちょくちょく報告を受ける結婚相談所(結婚マッチングサイト)の話も大変興味があったので、行くことにした。