意味を喪う

「意味をあたえる」のfktack( http://fktack.hatenablog.jp/ )の小説です。不定期に更新します。

余生(42)

※前回

余生(41) - 余生

 

「クラス同じになりましたね」

 とEさんはにこやかに言ってきて、私はそのときまでEさんのお子さんが、ネモちゃんと同級生だということを知らなかった。正確に言えば、朝、体育館でスリッパに履き替えて入るときに、Eさんを見かけた気がしたが、私は半年以上も間があいていたからEさんの苗字が本当にエハラであるのか自信がなく、気づかないふりをして無視をしようと決めていたのである。

 体育祭のとき、体育委員は5人いたので、競技ごとに担当を決めようということになり、私はムカデ競争とピンポン玉運びリレーの担当者となった。他には長縄跳びや綱引きがあったが、こちらは競技人数が多い上に点数が高いため、運動音痴の私は、少人数でマイナーな競技の担当となった。私としても気楽であった。しかしムカデ競争はある程度練習をして息を合わせておかないと、まともに進むこともできない。練習日は2日あり、K地区内の運動公園の芝生のところで行われたが、ついに全員が揃うことはなく、その度に私は先頭や3番目に入り(休む人は毎回違う)代役をつとめ、そして本番では案の定ビリであった。が、私はとりあえず本番に全員が来てくれたことに感謝し、打ち上げではEさんに何度もお礼を言った。Eさんは2回とも練習には参加した。ちなみに綱引きでは1位となり、総合でも3位となったので、それはK地区始まって以来の快挙だったので区長や老人会の人らも大変上機嫌となり打ち上げでは、体育委員を延長しないかと持ちかけられた。私はその時はビールも飲んでいたからやってもいい気がしたが、もし他の人が乗り気でなかったら浮いてしまうので、曖昧な返事をした。

「痩せましたよね?」

 とEさんは私に言い、しかし私は以前は太っていたこともあるが、半年前は今と同じ体重だったので、おそらく何かの話題を出さなければと考えたEさんが、たまたまスーツを着た私がスラっとして見えたので、言ったのではないか、と私は分析をした。そこからスポーツの話となり、Eさんは週に1回バトミントンをしている、と言った。小学校の裏にある公民館内に体育館があり、市内在住ならかなり安く借りることができる、とEさんは言った。Eさんは痩せ型である。