意味を喪う

「意味をあたえる」のfktack( http://fktack.hatenablog.jp/ )の小説です。不定期に更新します。

余生(63)

※前回

余生(62) - 余生

 

少ししてから整体師の人が来て

「スタッフの人ばっくれちゃったみたいっすね」

 と言い、その口調は接骨院での時よりもフランクであった。話によると、雨が強かったりすると、スタッフが勝手に店じまいにすることは、よくあることのようだった。そのときは私の友達は1人来ていて、また、整体師の人の後ろにも1人の彼の友人がいて、友人は色黒でがっちりしていてボディガードのように見え、私はなんだか、首脳会談でもしているような気持ちになった。そして、じゃあまた今度やりましょうということになって、別れた。ちなみに弟の友達の中には公務員の人がいて、公務員は災害時には庁舎へ詰めなければならない決まりなので、例えフットサル場の照明がついても、人数は揃わなかった。その時来ていた私の友人は、今は市外に住んでいて、普段なら30分くらいで車で来れる距離だが、地震のせいで国道では大渋滞が起き、その日は休みだった友人は昼過ぎに起きてから午後4時頃に家を出て

「本当に車が全然進まなくて大変だった」

 と言った。私はそんな大変な思いをして来てくれたのだから、このまま帰すのはしのびないと思い、駅前に行って飲もうかということになった。その人はじゃあ今日は実家に泊まると言い、その人の実家は私の家のすぐそばだった。それから私は一度家に帰って、妻に車を出してもらって、友人の実家経由で駅まで行き、駅前の2階にある居酒屋に入った。1階はファミリーマートで、すぐ隣には駐在所があった。居酒屋のドアの前には盛り塩がしてあり、店は通常通り営業していた。オーダーを取りに来た女の店員に、

地震でもやるんだね」

 と声をかけると、私は居酒屋で女の店員に声をかけるのは、注文以外では、なんだか私がこの女を誘惑しているような気持ちになるので、私は落ち着かなくなった。それはおそらく部長のせいで、部長は女に大変モテると前に書いたが、部長が居酒屋でアルバイトをしていたときには、よくレシートや紙ナプキンの裏などにメールアドレスを書いて渡されたと言うのだ。部長は相手は酔っ払いだからだと、その理由について述べたが、私はそれを素直に信じなかった。