意味を喪う

「意味をあたえる」のfktack( http://fktack.hatenablog.jp/ )の小説です。不定期に更新します。

余生(16)

※前回

余生(15) - 余生

 

 PC、と書いて思い出したが昨年の夏に、ここの幼稚園で飼育していた馬が死んでしまい、それは老衰で人間にカンサンすると100歳を超える年齢で、実は私がその幼稚園に通っていた当時からいた馬であった。私は馬にはあまり関心はなかったので、ネモちゃんが入園した後の父親参観の行事のときにその馬を見かけたが、まさか当時の馬だとは思わなかった。私は死んだニュースを聞いて驚いた。私はそのニュースは園長本人の口から聞き、それは去年の8月の後半に、地区対抗のソフトボール大会の練習のときに聞いた。園長は私と同じK地区に住んでいて、園長はソフトボールが大変得意であり、しかも長い期間園長なので人望もあり、ソフトボールなんかしたことのない主婦にもバットの振り方を、柔らかい口調で教えたりしていた。もう白髪頭なのでいやらしい感じはしなかったが、やはり少しはいやらしかった。最初にキャッチボールをして次にトスバッティング、それからノックと試合形式になるのだが、私は少し前から肩が痛いので、
「ちょっと肩を痛めて」
 と言って日陰で選手名簿を眺めながら時間を潰した。どちらにしろルールでは、男は45歳を迎えなければ試合には出られないこととなっている。私がここにいる理由は体育委員という役員をやっているためであった。そして馬が死んだことは、休憩中、とても暑い日だったのでオカダさんが近くのミニストップでソーダー味のアイスバーを買ってきてくれ、それを食べながら聞いた。私は練習には出なかったので、アイスの本数が足りなくては悪いので、遠慮しようかと思ったら、オカダさんは私のそんな配慮には気付かずにビニール袋を揺すって勧めてきた。仕方なく私は袋に手を突っ込み、包みの端をつかんだ。本当のところ私はソーダー味のアイスが好きではなかった。今日の練習に来た人は20人ほどいて、20本のアイスはすぐに溶けたので急いで口に入れた。