意味を喪う

「意味をあたえる」のfktack( http://fktack.hatenablog.jp/ )の小説です。不定期に更新します。

余生(43)

※前回

余生(42) - 余生

 

「バトミントンなら、最低2人いればできるから、気軽ですよね」

 と私は話を合わせた。対する私は仲間内でフットサルをやっていたことがあるが、通常なら10人、最低でも8人集めなければならなかったので、やっていたころは、いつもちゃんと人数が揃うのか気を揉んでいた。いつのまにか、やらなくなった。

 ところでEさんが体育祭でムカデ競争で足並みを揃えている一方、Eさんの奥さんはピンポン球運びリレーに出ていたので、やはり私の担当であった。Eさんの奥さんはつり目で、少しきつい性格なのではないかと私は勝手に判断し、競技の説明をする時(何m走るか、とか)私は緊張をし、言葉も途切れ途切れになってしまったが、奥さんは熱心に聞いてくださり、

「球落としたらやばいですよね」

 と口元をゆるめた。50mの距離を再現するために、およそ25m離れたところで区長の1人にポールを置いてもらい、そこを折り返しとして割り箸で球を挟んで走ってもらった。奥さんはアディダスのピンク色のジャージのズボンに、白いTシャツを着て、首にはタオルを巻いていた。9月でまだまだ残暑は厳しく、練習の番が回ってこない人は、みんなフェンス際の木陰で休んでいた。私は普段から箸の扱いはうまく、豆類でもなんなくつまめるし、プラスチック製の箸ならともかく、ピンポン球運びリレーでは木の割り箸を使うので、ピンポン球なんてまず落ちないと思っていたが、いざやってみると、思いの外ピンポン球の表面は滑りやすく、私は何度も芝生の上に落とした。ようやくゴールすると、奥さんに

「下手ですね」

 と笑われた。奥さん、と言うと私よりもずっと歳上の感じがするが、実際は1歳か、2歳歳上なくらいである。後で名簿を確認したらサトミさんという名前だった。次の週に本番となると、誰もピンポン球を落とさずに運ぶことができ、K地区は1位でゴールすることができた。しかしピンポン球運びリレーは朝一番の種目であったため、イマイチ盛り上がらなかった。