余生(45)
※前回
私はその夜に家に帰ると、お土産として持ち帰った、余った惣菜と寿司をひとつの容器にまとめてビニールの風呂敷で包んだものを、志津とネモちゃんに渡して食べさせた。結構遅くまで飲んでいたつもりだったので、こんな時間まで起きている2人に私は驚いたが、時計を見るとまだ7時を過ぎたところだった。義父がテレビで巨人戦を観戦していた。義父は5点以上差がつくと、勝っても負けてもその時点でテレビを消すので、今夜はまだ接戦であった。義母がどうやって帰ってきたかを聞いたので、私は送ってもらったと説明をした。帰りは区長のひとりのオカダさんの車に乗せてもらい、送ってもらった。車はオカダさんの奥さんが運転をしていた。区長の奥さんたちは、こういう地区の会合がある時は、お勝手に詰めて世話をする。私が瓶ビールを取りに行った時には、短髪の太ったオカダ夫人は自分でビールをついで飲んでいた気がするが、気のせいだったのかもしれない。私は最初、ひとりで歩いて帰るつもりで、途中で妻に迎えに来てもらえばいいやと思っていたが、案の定電話は繋がらなかった。予想よりも早く終了したから、風呂にでも入っているのかもしれない。仕方なくゆっくりと夜道を歩いていたわけだが、そこは車通りのほとんどない裏道で、裏道のため道路の整備は行き届いておらず、アスファルトは所々でひび割れていた。だから私はそれに足を取られないよう注意をした。
しばらく歩くと私を後ろから追い越した黒いセダンが、私の少し先でとまった。助手席の窓が開き、中から顔を出したオカダさんが
「乗っていきなよ」
と声をかけてくれた。私はまるで最初から乗せてもらうことをあてにしていたみたいで、みっともない気がしたが、オカダさんは酔っ払っているからそこまで頭は回らないだろうと判断し、私は後部座席にお邪魔した。