意味を喪う

「意味をあたえる」のfktack( http://fktack.hatenablog.jp/ )の小説です。不定期に更新します。

余生(48)

※前回

余生(47) - 余生

 

 私はEさんを探し続けたが見つからないので、トイレにでも行ったのだろうと決め付け、集会場は数年前に建て替えたばかりなので、トイレもまだまだきれいで、男子トイレと女子トイレの間には身障者トイレもあった。私はネモちゃんがまだひとりで用を足せないときには、よく身障者用のトイレを利用し、そうすると男子トイレにネモちゃんを連れて行かなくても済むので、大変ありがたかった。

 齋藤さんとの話は、いつのまにか齋藤さんの仕事の話となり、齋藤さんは倉庫内で荷物を運ぶ仕事をしていた。フォークリフトを操りながら、その仕事は残業が多く、繁忙期になれば日付をまたいでしまうこともよくあるそうだ。こんな暇つぶしの役員なんて、そう何年もできないと言いたいのかもしれない。齋藤さんは体育委員の2年目で、今年でやめるときっぱり宣言をしていて、宣言する度に、4年もやっている私はなんだか恥ずかしい気持ちになった。その後区長や評議委員の人が何人かビールをつぎにやってきて少し話をし、やがて締めの挨拶があって片付けがあって会は終了した。

 車の中でオカダさんに、もう何年やっているのかと聞かれ、私が

「4年です」と答えると、
「もう1年くらいやったら」

 と言われた。私はさっきの齋藤さんとの会話を思い出し、

「いや、もう流石にもういいでしょう」

 とうんざりした感じで言った。酔っ払っていたから、少しオーバーな言い方になったかもしれないと、私はすぐに反省をした。酔っ払っているから、申し訳ない気持ちになったような気もした。忘年会の時は、年寄りの数が多かったためそんなに飲んだ気はしなかったが、今日は若めの人も多いし、昼間は強い日差しにあたって走ったりしたから、全体的なビールの消費量は多かった。私はもうこんなことを4回も繰り返しているから、日の下に出る時はきちんと日焼け止めを塗り、それは近所のドラッグストアで、自分で金を払って買った。先日志津がやはり中学校の体育祭があり、自分の日焼け止めを持っていないから貸してくれと頼まれ、私は「いいよ」と答えた。すると妻がそれは肌には良くないタイプだからと言って、志津を塾に送ったついでに、別の日焼け止めを購入してきた。私は同じドラッグストアで買えば、効果や副作用には大差ないと感じたが、妻のこだわりに口を出してもいい結果にはならないから黙っていた。オカダさんも私の言ったことに対して黙ってしまったが、やがて口を開いた。しかしオカダさんは前を向いたままで、うまく聞き取れなかった。声の感じもなんだかおかしい。