意味を喪う

「意味をあたえる」のfktack( http://fktack.hatenablog.jp/ )の小説です。不定期に更新します。

余生(31)

※前回

余生(30) - 余生

 

私の腰の痛みの原因は春先にぎっくり腰をしたせいで、ディズニーリゾートへ一泊したことが遠因だった。1日目はディズニーランド、2日目はディズニーシーへ行き、最後のパレードまでみっちり見て存分に海風にあたって帰ったら、案の定風邪を引き、寝込む羽目となった。会社へ欠勤の連絡をした後、妻がパートへ出る前に洗濯物を干すように頼まれていた私は、私は普段から仕事で洗濯物を干すことには慣れていたので、特に注意もせずに家族全員の上着や下着、靴下を洗濯ばさみで挟んでいったら、腰に違和感を覚え、そのあとは慎重に干した。翌日は体調も戻ったので普通に会社へ行ったら、夕方5時を過ぎてから商品をを持ち上げたら、信じられないくらいの痛みが腰に走り、しかしあと1時間で定時なので、私は誰にもそのことを言わずに仕事をやり切った。私の仕事は残業はめったなことでは発生しないのだ。

 実は私は以前にも何回かぎっくり腰をやったことがあり、本当にひどい状態ならその場から一歩も動けなくなるし、動けるということはそこまでひどい状態ではない、と勝手な判断をしていた。一度家に帰り、車の運転中も座席の上でずっと腰をひねって、痛みの程度を調べ続けた。夕飯はオムライスであった。私は畳の上には座れなかったので、ソファの上に座って皿を持ち上げてオムライスを食べ、さんざん迷ってから接骨院にかかることにした。ソファは青色で、私がこの家にくる前からあった。以前発症したときには、実父の知り合いがやっている、R町の整骨院まで行っていたが、そこは7時までなので、今度は近所の8時までやっているところに行った。その接骨院は数年前までは花屋であり、花屋には年老いた女主人と、その孫の女の子が働いていることを、私は何度か花を買いに行ったことがあるので知っていた。女の子の両親は駅前通り本店にいる。その頃私はまだ結婚前だったので、ちょくちょく花屋を訪れる習慣があり、私はよくその店を訪れたのである。女の子は私のような若い男が花屋にくるなんて珍しいと言い、いつも消費税分だとか包装代をサービスしてくれた。しかし私はいつも「花束2000円分」みたいな注文の仕方をしていたので、本当にサービスをしていてくれたかは、疑わしい。