意味を喪う

「意味をあたえる」のfktack( http://fktack.hatenablog.jp/ )の小説です。不定期に更新します。

2015-01-01から1年間の記事一覧

小説「余生」の連載が終わりました

私はこの小説にかんしては、特に日付も残していないので、一体いつからいつまで書いたのかはっきりと覚えていないが、と書くと他のは残していてこれだけが例外という印象を読者にあたえるかもしれないが、だいたい私はそういうのに無頓着なのです。だいたい…

余生(61) - (65)※最終回

※前回 余生(56)-(60) - 余生 私と部長は大学を卒業してからも、こうしてたまに会って、酒を飲みながら話をする関係を続けた。それは10年以上に及ぶが、その間に部長は3回、私は4回職を変えた。部長は今は都内に住み、都内の会社に勤めていた。営業職であ…

余生(65)※最終回

※前回 余生(64) - 余生 私は顧問の教師が頻繁に体罰を行う教師だったので、あまり部活には顔を出さなかった。顧問はスマートで若く、顔も美形でマネキンのような顔をしていたので、美形だからよく人を殴るのだろうと、当時私は思った。私も1度職員室で、ユ…

余生(64)

※前回 余生(63) - 余生 酔っ払いといえば、私が組合で働き始めたとき、それは前に述べたとおり建設業者の組合で、私はそこに勤める直前まで、とあるマンツーマンの塾にアルバイトとして勤めていた。3月に受け持っていた生徒が第一志望の高校に受かり、私は…

余生(63)

※前回 余生(62) - 余生 少ししてから整体師の人が来て 「スタッフの人ばっくれちゃったみたいっすね」 と言い、その口調は接骨院での時よりもフランクであった。話によると、雨が強かったりすると、スタッフが勝手に店じまいにすることは、よくあることのよ…

余生(62)

※前回 余生(61) - 余生 私は部長がメニューを眺めている隙に携帯の画面を開き、最近のメールをチェックしてみることにした。受信ボックスには業者からのメールが数多く入っていたが、そのうちに部長のメールが見つかり、そこによれば、今は教師と付き合い始…

余生(61)

※前回 余生(60) - 余生 私と部長は大学を卒業してからも、こうしてたまに会って、酒を飲みながら話をする関係を続けた。それは10年以上に及ぶが、その間に部長は3回、私は4回職を変えた。部長は今は都内に住み、都内の会社に勤めていた。営業職であるが…

余生(56) - (60)

※前回 余生(51)-(55) - 余生 やがて研修の最終日の帰り、 「どこかで食事でも」 と私がDを誘うと、あっさり断られた。 「奥さんと娘さんが待っているんじゃないですか?」 「待ってないよ。もう食べてるって。下手すりゃ寝てる」 本社から私の家までは2時…

余生(60)

※前回 余生(59) - 余生 旅行先は山中湖であり、途中で釣り堀に寄って、ニジマスとイワナを釣った。それをバンガローまで持って行き、バンガローの庭先でバーベキューをする予定であった。途中で雨が降ってきて、それは強い雨だったので釣り堀は早めに切り上…

余生(59)

※前回 余生(58) - 余生 終バスが10時57分だとしたら、10時50分まで粘ってバス停まで走れば、話したいことも十分話せるだろう。そうでないのなら、たとえば終バスが10時3分なら、「バスの時間があるから」と無理に話を切り上げてしまうのも手だ。…

余生(58)

※前回 余生(57) - 余生 自転車で来る人の自転車は、後輪の泥除けの部分にシールが貼ってある。銀の光沢のあるシールには、任意のアルファベットが一文字と、そのあとに2桁の番号が印刷されている。どうやらこのシールが貼ってなければ、駅の駐輪場には置け…

余生(57)

※前回 余生(56) - 余生 勘弁してよ、としゃがれた声で言いながら、Jさんは私の二の腕を掴んで来て、私はオーバーな動きでそれをほどいた。中で作業している人に、サボっていると思われても癪なので、早く雑巾を干し終えて中に入りたかった。しかしJさんは…

余生(56)

※前回 余生(55) - 余生 やがて研修の最終日の帰り、 「どこかで食事でも」 と私がDを誘うと、あっさり断られた。 「奥さんと娘さんが待っているんじゃないですか?」 「待ってないよ。もう食べてるって。下手すりゃ寝てる」 本社から私の家までは2時間かか…

余生(51) - (55)

※前回 余生(46)-(50) - 余生 ところで私はこの芸能人の水泳大会の番組を、父親と一緒に観ていた。その時母は台所で洗い物をしており、妹と弟はそこら辺にいたのかもしれないが、忘れてしまった。私は父のことばかり意識していた。 私と父は居間でテレビを観…

余生(55)

※前回 余生(54) - 余生 Dは、私よりも9歳下の女であるが、私と同じ年に入社していた。話す機会はほとんどなかったが、1度だけ本社で行われた新入社員研修で一緒になったときがあり、その時は頻繁に会話をした。Dは細身で髪は短く、いつも黒のパンツを着…

余生(54)

※前回 余生(53) - 余生 私の部署へ飛ばされる第一候補は、営業のJさんではないかと、私たちは予想した。Jさんは営業所では最も年長の50代の男で、痩せ型で、ワイシャツの選び方にもセンスがあったが、仕事の方はイマイチであるとの噂であった。その証拠…

余生(53)

※前回 余生(52) - 余生 ノグチはせっかちで早とちりをする性格であったが、小気味がよく熱心であるので、私たちは事務所で上司に 「社員にすることはできないのか?」 と度々相談をした。私たちの会社は少し前に社長が代替わりをし、若い社長になったせいか…

余生(52)

※前回 余生(51) - 余生 現在では視聴者の苦情が多数寄せられたのか、世の中の嗜好が大きく変わったせいなのか、水泳大会が放送されることはなくなった。それに伴って家族の中での父親の役割、ポジションも大きく変わったのである。私は先日、河合隼雄の「心…

余生(51)

※前回 余生(50) - 余生 ところで私はこの芸能人の水泳大会の番組を、父親と一緒に観ていた。その時母は台所で洗い物をしており、妹と弟はそこら辺にいたのかもしれないが、忘れてしまった。私は父のことばかり意識していた。 私と父は居間でテレビを観ていた…

余生(46) - (50)

※前回 余生(41)-(45) - 余生 すると、私は助手席の後ろ側のドアを開けたのだが、そこにはEさんが座っていて、 「どうも」 と挨拶をしながらEさんは奥へずれてくれた。Eさんの動きは極めて緩慢であり、運転席の後ろにおさまると、頭をシートににぴったりつ…

余生(50)

※前回 余生(49) - 余生 しかしヤクザにしてみても、このまま空手で帰るわけにはいかないので、金をむしり取ることは無理でも、何らかの言質をとって帰らなければ、こちらもこちらで上司に大目玉を食らう。というわけで車の外から拡声器で声をかけたわけであ…

余生(49)

※前回 余生(48) - 余生 私がオカダさんの声だと思っていたものは、実は車の外から聞こえてきたもので、やがてその声は「とまれ」と発していることがわかり、オカダさんの奥さんは車を停めて、サイドブレーキを引く音が車内に響いた。私は奥さんが車を停めた…

余生(48)

※前回 余生(47) - 余生 私はEさんを探し続けたが見つからないので、トイレにでも行ったのだろうと決め付け、集会場は数年前に建て替えたばかりなので、トイレもまだまだきれいで、男子トイレと女子トイレの間には身障者トイレもあった。私はネモちゃんがま…

余生(47)

※前回 余生(46) - 余生 私は齋藤さんに 「あの時は、久しぶりにザリガニ釣りできて楽しかったですよ。釣ったの中学が最後、かも」 とむしろ子供の面倒を見られてラッキーだったかのような口振りで話したが、あの時は暑かったし、随分な距離を歩かされたから…

余生(46)

※前回 余生(45) - 余生 すると、私は助手席の後ろ側のドアを開けたのだが、そこにはEさんが座っていて、 「どうも」 と挨拶をしながらEさんは奥へずれてくれた。Eさんの動きは極めて緩慢であり、運転席の後ろにおさまると、頭をシートににぴったりつけて…

余生(41) - (45)

※前回 余生(36)-(40) - 余生 私はリビングに行って、ネモちゃんに 「先生て何歳?」 と尋ねると 「25歳か35歳」 と返ってきた。こんな風に数字が離れるのはおそらく、年齢の話になったとき、ネモちゃんが聞き取れたのは 「◯じゅうごさい」 の部分のみだ…

余生(45)

※前回 余生(44) - 余生 私はその夜に家に帰ると、お土産として持ち帰った、余った惣菜と寿司をひとつの容器にまとめてビニールの風呂敷で包んだものを、志津とネモちゃんに渡して食べさせた。結構遅くまで飲んでいたつもりだったので、こんな時間まで起きて…

余生(44)

※前回 余生(43) - 余生 体育祭の打ち上げは当日の4時30分から、K地区の集会場で行われた。入り口にある木でできた表札には「老人憩いの家」と書かれ、広間には畳が敷かれていた。その打ち上げにはサトミさんはおらず、最初はサトミさんもEさんも打ち上…

余生(43)

※前回 余生(42) - 余生 「バトミントンなら、最低2人いればできるから、気軽ですよね」 と私は話を合わせた。対する私は仲間内でフットサルをやっていたことがあるが、通常なら10人、最低でも8人集めなければならなかったので、やっていたころは、いつも…

余生(42)

※前回 余生(41) - 余生 「クラス同じになりましたね」 とEさんはにこやかに言ってきて、私はそのときまでEさんのお子さんが、ネモちゃんと同級生だということを知らなかった。正確に言えば、朝、体育館でスリッパに履き替えて入るときに、Eさんを見かけた…