意味を喪う

「意味をあたえる」のfktack( http://fktack.hatenablog.jp/ )の小説です。不定期に更新します。

2014/1/20

 さくらマーケットには若い男の社員が3人いて、それ以外に中年の女の店員(店長?)もいて、店の品物を万引きされないように私たちに目を光らせていた。そして誰かがガラスのディスプレイに指紋を押し付けたり、中古のスーパーファミコンの本体はラップでぐるぐる巻きにされていたが、そういうのを持ち上げると、中年の女はすぐにやってきて注意をしてきた。店員たちのユニフォームは、黒い無地のエプロンだった。中年の女以外は、よく棚や床を掃除した。私たちは、そんな風にさくらマーケットの方は居心地が悪かったので、どちらかと言えばもうひとつの方の店舗をひいきにして、店の外では中年女を「さくらのババア」と呼んだ。

 できればさくらマーケットでないほうの店で、私たちは買い物をしたいと思っていたが、そうはならない理由は2つあった。ひとつは欲しいカセットがもうひとつの方で品切れだと、やはりさくらマーケットで買わなければならない。もうひとつは、さくらでない方の店は経営が大変マイペースであり、午後などに訪れても、店が開いていない場合があった。夏休みに1度行った時があったが、私は10時頃に集合して向かえばいいのではと提案すると、あの店は午前中はやってないと言われ、2時頃に店に訪れた。前まで来ると扉が閉じられており、その扉は、喫茶店のような茶色い洋風のドアだった。私たちはドアの前で大変がっかりした。しかし怒りよりも、なんだかからかわれた時のような感じがしたので、みんな笑った。ところで私は店のドアが閉まっていたから店はやっていない、と判断したわけだが、そうなると普段営業している時はドアが開いていることになる。しかし夏場で暑いのに、ドアが開いているなんてことがあるだろうか? 店内は大変涼しかった。よくよく思い出してみると、店のドアはガラス戸で、しかも扉は二重だったような気もする。私たちが即座に閉店していると判断できたのは、シャッターが閉まっていたからだ。ドアが開けっ放しであれば、猫も逃げてしまう。

 そうなると、せっかく電車にまで乗ってきたのだから、さくらマーケットに行かないわけにはいかない。さくらマーケットもうひとつは、電車に乗って2駅のところにあった。駅までは私の家から自転車で30分くらいかかった。さくらマーケットのドアは自動ドアであり、窓ガラスには色画用紙にマジックで目玉商品の値段が書かれていた。さくらマーケットは東口から走って30秒、と新聞の折り込みチラシには書かれていた。出入口の庇には大きく店名と電話番号が書かれ、電話番号は市外局番が省略されていた。さくらじゃない方はそこから先の2、3軒挟んだ先に店を構え、特に看板があるわけでもなかった。そのため私は安いゲームソフトを求める人の中には、さくらマーケットを知っていても、その先にさらにもう1件店があるなんて、知らない人もいるだろうと思った。そうなるとさらに先にはまた別の店があるような気がして、私は思い切ってここら一帯を探索してみたら面白いんじゃないかと友達に提案した。私はその頃から少し話が上手になったので、このわずかな距離に2軒あるのだから、ここがゲームの流通の重要な地点かもしれないから、駅の西口の方にも店がある可能性が高いとか、適当な理屈をこねてみたが、暑かったので却下された。

 ところでさくらマーケットにしろもう1店にしろ、私は仲間内では割と後の方にその店を訪れるようになったわけだが、最初には一体誰が存在を知っていたのかおぼえていないし、その当時も知らなかった。その頃の私は人間関係について、あまり吟味せずにとにかく周りに合わせようと必死であった。それは前のクラスでいじめを受けていたこともあるし、近所には幼馴染が住んでいたが、その人は小学5年の時に引っ越しをして学校は転校しなかったが、気軽に遊べるような家の近さではなくなり、またクラスも違ったので私たちは疎遠になった。そのために私は一気に遊び相手がいなくなったので、当時は友達作りに必死だったのです。

 

 幼馴染について追記するが(20140221追記)、この幼馴染とは実は2人いて、2人は双子だったので同じ住所に両親や他の姉妹と暮らしていた。私の家は国道のすぐそばにあったが、幼馴染の家はまさに国道沿いにあり、そこは1階はトヨタの車の販売店で、そこの2階部分を借りて暮らしていた。家の中は狭いので私は1度か2度しか行ったことがなかった。緑色の絨毯がひかれた家だった。幼馴染の双子とは男と女の双子で、私は当然ながら男の方とより仲良くなって毎日のように遊んだが、クラスが同じだったのは女の方であった。

 私は小学低学年の頃は、双子というのは星座で言うと双子座の人しかなれないと思っていて、私の妹は双子座であるが、もちろん双子座だからと言って全員が双子とは限らない。しかし、その逆はあり得ない。その裏付けとして、幼馴染の双子も双子座であったから、私は長い間そのことを信じてきたが、ある日誰かに

「そうとは限らないよ」

 と言われ、さらによくよく確認してみると、幼馴染の方も実は蟹座であった。さらにこの2人は厳密には双子ではなく、女の方が何分か先に母親の腹から出てきたため、厳密には姉になるという話を聞き、私はだから蟹座なのでは? と疑ったが全然関係なかった。

 ある時その幼馴染の家は国道に面していると述べたが、そのすぐそばで事故があり、その事故とは車が電柱に突っ込んだ。幼馴染の話によると、突っ込んだ電柱というのが、トヨタの販売店のすぐ前に立てられたものであり、もしこの電柱がなかったら車は販売店に突っ込んで炎上し、その上に住んでいた幼馴染一家は、今頃焼死しただろうということだった。そういう危険な場所に住んでいたから、いずれは違う土地に引っ越すのだと、その時幼馴染は述べたが、危険でなくても、国道はいずれは拡張する計画があって、現在そこは4車線になったので、幼馴染の家はどちらにしろ解体された。(追記おわり)

 

 さくらマーケットともう1店については、私の学年全体が存在を知っている風であった。

(続く)

第1回


2013/12/11 - 西門