意味を喪う

「意味をあたえる」のfktack( http://fktack.hatenablog.jp/ )の小説です。不定期に更新します。

余生(65)※最終回

※前回

余生(64) - 余生

 

私は顧問の教師が頻繁に体罰を行う教師だったので、あまり部活には顔を出さなかった。顧問はスマートで若く、顔も美形でマネキンのような顔をしていたので、美形だからよく人を殴るのだろうと、当時私は思った。私も1度職員室で、ユニフォームを取りに来なかったという理由で殴られた。私は鼻の頭の硬い部分に裏拳をくらい、殴られながら私は、もう少し上だったら鼻血が出て大騒ぎになるから、この教師は普段から殴り慣れているだけのことはあるな、と感心をした。こうして冷静さを保つことが、教師に対する反抗だと、このときの私は考えていたのである。しかし今思えばこれは相手の思う壺であった。

 美形の顧問は、そのあと書道の女教師と婚約をした。「書道の」とつけたが、女教師については、私は何の面識もなかったので、適当に付けただけである。見た目が書道教師っぽかったのだ。

 私は書道教師はずんぐりして目も小さかったので、美形の顧問とは、とても不釣り合いだと思った。同時に、結婚してそのうちに、女教師を定期的に殴るようになると私は予想し、女教師を気の毒に思った。しかし美形の相手なら、女教師も少しは我慢しようとか思うのかもしれない。または、実家の父母が一度嫁いだのだから簡単に音を上げるんじゃないと、叱りつけるかもしれない。その後については私は卒業してしまったので知らない。

 私が3年になって部活を引退してしばらく経ったある日、美形の顧問はある女生徒を事務室の前で蹴り飛ばし、それが問題になっていると、噂が流れた。事務室の前の廊下は、あまり生徒が通らないため、他の廊下よりも光沢があった。

 

<了>