意味を喪う

「意味をあたえる」のfktack( http://fktack.hatenablog.jp/ )の小説です。不定期に更新します。

余生(12)

※前回

余生(11) - 余生

 

私は、5人いる区長の中では、オカダさんに1番親近感を抱いていた。区長は全員が見守りボランティアに登録して、代わり番こに児童の登下校に付き合うこととなっていた。

 ネモちゃんが1番最後に集合場所にたどり着き、その時には班のひとりの男の子がゴミ袋に蹴りを入れていた。班長は6年生の女の子で、黄色い班旗を携えていた。ネモちゃんが到着すると、ネモちゃんはその班長のすぐ後ろをついて行った。その日は燃えるゴミの日で、ゴミ袋は私の背よりも高く積み上げられていた。やがて収集車がやってきた。

 それからおよそ1ヶ月が経ち、ゴールデンウィーク直前になるとネモちゃんは突然

「学校へ行きたくない」

 と言い出した。

 それは朝の話で、私たちは毎朝6時半に起床することとなっており、ネモちゃんは3月に子供チャレンジから送られてきた喋る目覚まし時計で起きるようにしていた。ネモちゃんはそれを大変気に入っていたので、目覚ましの音を自分の手で止めたいと思っていたので、自然と自分で起きるようになった。最近では服も自分で前日にタンスから出し、段ボールの横へたたんでおいて、朝になるとそれを着た。段ボールはとても大きなものであり、それはつい一週間ほど前に無印良品で買ったビーズクッションが入っていたものだった。このビーズクッションは、ネットで紹介されていたのだが、それを見たら私はとても欲しくなり、元々私たちの部屋にはこうしたクッション類はなく、私が本を読みたい時には畳に寝そべって読んでいた。私の部屋の畳は8畳だった。だがこうして本を読んでいるとだんだんと体が痛くなり、しかも私は1年前にはぎっくり腰にもなっていたので、尚更ぐあいが悪かった。仕方なく寝巻きに着替えてベッドで枕を縦にして読んだりするのだが、ネモちゃんが寝る時間となって消灯をすれば、それ以上は読めないのである。