意味を喪う

「意味をあたえる」のfktack( http://fktack.hatenablog.jp/ )の小説です。不定期に更新します。

余生(10)

※前回

余生(9) - 余生

 

 ソックスはホワイト、グレー、黒の3種類なのだが、H・Kくんはグレーを履いていた。私は黒を選択した。そうしたら妻にはおじさん臭いと言われ、不愉快だった。その理由は、私も買うときに同じことを思ったからである。

 私の会社は週に5日、第1週と5週に関しては土曜日も出勤することとなっている。その週は6日出る週で、H・Kくんは衣類に関しては一週間に同じ服を着ないと自分の中で決めており、従ってソックスに関しては同じ3足セットを2つ購入している。そうしないと生地に負担がかかって早く駄目になるから、という話であった。服に関しては、私の仕事は白いツナギを着て作業をするのだが、ツナギは3着しか会社から支給されない。H・Kくんは毎日きちんと洗濯をし、3着の襟の部分に色の違うマーカーで番号を振り、きちんと同じ順番で着用できるようにしている。1が赤で2が紫、3が緑であった。ツナギには胸の部分に会社のロゴが入り、社外には持ち出し禁止なので、作業場の窓際にある洗濯機で洗うことになっている。H・Kくんが入社するまでは、私は冬場だったり、暇だった日は、洗わないで2日続けて着ることもあった。