余生(23)
※前回
それから翌年の春に志津は中学生になり、5月に入ったところで
「学校に行きたくない」
と言い出した。ネモちゃんが言い出す1年前の出来事である。
ところで私の書くスピードが遅いので、書き終わらないうちにゴールデンウイークが明けてしまった。私がこの小説を書き始めたのは、4月の花見のときであった。休みが明け、私は久しぶりに会社へやってきた。
3ヶ月ほど前から私の部署では派遣社員を雇うようになった。1人入ったが、その後にもう1人くらい入れるとなって、そうしたら最初の1人であるノグチくんが
「それじゃあ自分の友達連れてきてもいいですか?」
と言ってきた。友達は翌月から入り、2人は仲良く仕事を覚えて行った。私もそれ以外の人も常日頃から思っていることだが、私の部署の仕事は楽で、そのため2人が仕事でヘマをする姿は、なんとなく微笑ましく我々の目に写った。しかし、B男の方はとても不器用な男であり、ネジを回すのにも右回しか左回しかもわからずにスノコの隙間にネジをぽろぽろ落とす有様で、彼のいない時に事務所で上司に聞いてみると
「面接じゃニトリの家具を組み立てたことあると言っていたよ」
と言うので、少なくとも私たちの仕事は、ニトリの家具を組み立てることよりは難しいということがわかった。私たちの仕事についてもう少し書くと、あるひとりの先輩は娘が2人いるが、この2人は父親がどんな仕事をしているのかについて、一切教えられていないそうだ。恥ずかしくて言えないという理由だった。その話を私たちは雑巾をみんなで干している時に聞いたのだが、元は私が水を向けた話で、その前日に私は志津に
「ノブくんの仕事は絶対にやりたくないよ」
と言われ、そのことをみんなに話したのだ。