意味を喪う

「意味をあたえる」のfktack( http://fktack.hatenablog.jp/ )の小説です。不定期に更新します。

余生(22)

※前回 余生(21) - 余生 「志津はいつも元気がないなあ。ちゃんと早寝してる? 夜更かししてるんじゃなくて?」 「はあ。そうですか」 そのときはもう私はだいぶビールを飲んでいたので、ぶっきら棒に応対した。老人は交通安全のボランティアで、毎朝志津と会…

余生(21)

※前回 余生(20) - 余生 それから1ヶ月もしないうちに黒沢さんは亡くなった。私は、黒沢さんの近所の組合員からそのことを教えてもらった。私は支部長に電話をかけて葬儀の日程を伝え、組合の分の香典を持って行ってくれるように頼んだ。金額は1万円で、立…

余生(16) - (20)

※前回 余生(11)-(15) - 余生 PC、と書いて思い出したが昨年の夏に、ここの幼稚園で飼育していた馬が死んでしまい、それは老衰で人間にカンサンすると100歳を超える年齢で、実は私がその幼稚園に通っていた当時からいた馬であった。私は馬にはあまり関心…

余生(20)

※前回 余生(19) - 余生 私は車を降りてから、前日にコピー用紙をカードサイズに切った整理券を持って、トラックの中に待機しているひとりに誰が1番に来たのかたずねてまわった。到着した順に配らないとあとからうるさいからで、そうしたらその人は私が見た…

余生(19)

※前回 余生(18) - 余生 それは去年の忘年会のときの話で、そのとき私たちは同じ体育委員だったので席が隣で話すこともないので、大して面白くもないが、自然とそういう話になるのである。逆に齋藤さんの方からも 「どこに住んでいるの?」 と質問をされ、私…

余生(18)

※前回 余生(17) - 余生 子供たちが私を連れて行ったところは、確かに川だったが、グラウンドからすぐのところではなく、そこから数百メートル川下に行ったところだった。彼らはそこでザリガニを見たと言うので、1度はそこまで歩いて行ったのだ。もしかした…

余生(17)

※前回 余生(16) - 余生 どんな話の流れで馬の話になったのかは忘れたが、その話を私は、同じ地区の顔見知りという間柄の風を装って聞いた。園長が私のことを園児の親であり、さらには私自身もかつては同じ園に通っていて、園長のことはよく知っているが、向…

余生(16)

※前回 余生(15) - 余生 PC、と書いて思い出したが昨年の夏に、ここの幼稚園で飼育していた馬が死んでしまい、それは老衰で人間にカンサンすると100歳を超える年齢で、実は私がその幼稚園に通っていた当時からいた馬であった。私は馬にはあまり関心はな…

余生(11) - (15)

※前回 余生(6)-(10) - 余生 さっきからH・Kくんの話ばかりが続くので、バランスを取るために、彼が入る前のエピソードを挿入しようかと思ったが、それよりもいつのまにか月がかわり5月となり、気がかりなことが2つほどあるのでそちらを先に書く。この小…

余生(15)

※前回 余生(14) - 余生 電話の終わった妻がこっちへ来て喋り始め、聞いてみるとネモちゃんのイジメに対する担任の反応は薄く 「ちょっと気をつけて見てみます」 と答えただけで、妻は物足りない様子だった。私も同じ気持ちであったが、朝だからバタバタして…

余生(14)

※前回 余生(13) - 余生 解決策として、妻は心電図の時間だけ車でネモちゃんを連れてって、終わったらすぐに帰ってくればいいのではないかと提案してきた。が、私は学校へ行って件の男の子に会ってしまったら、いやそれ以外のクラスメートでも、授業をサボっ…

余生(13)

※前回 余生(12) - 余生 私は反射的に 「じゃあ休んじゃいなよ」 と言い、私はまだ布団の中にいたので、まるで寝ぼけて適当なことを言っているような感じだったが、私の頭はさえていた。妻はすぐに 「なんで?行きなよ、明日休みでしょ?」 と怒鳴り声を上げ…

余生(12)

※前回 余生(11) - 余生 私は、5人いる区長の中では、オカダさんに1番親近感を抱いていた。区長は全員が見守りボランティアに登録して、代わり番こに児童の登下校に付き合うこととなっていた。 ネモちゃんが1番最後に集合場所にたどり着き、その時には班の…

余生(11)

※前回 余生(10) - 余生 さっきからH・Kくんの話ばかりが続くので、バランスを取るために、彼が入る前のエピソードを挿入しようかと思ったが、それよりもいつのまにか月がかわり5月となり、気がかりなことが2つほどあるのでそちらを先に書く。この小説の…

余生(6) - (10)

※前回 余生(1)-(5) - 余生 すると、ドアの向こうから「誰かいるのか?」と声が聞こえ、ドアとは私が入ってきたガラス戸ではなく、右側の木の引き戸の方から聞こえた。そういえば下駄箱には黒い靴が詰まっていたことを思い出した。交流会は4時からの予定で、…

余生(10)

※前回 余生(9) - 余生 ソックスはホワイト、グレー、黒の3種類なのだが、H・Kくんはグレーを履いていた。私は黒を選択した。そうしたら妻にはおじさん臭いと言われ、不愉快だった。その理由は、私も買うときに同じことを思ったからである。 私の会社は週…

余生(9)

※前回 余生(8) - 余生 とりあえず私は区長の方へ行こうと思ったが、オカダさんの血が靴下についてしまわないように、注意深くオカダさんの死体をまたいだ。そこで私は、うっかり5本指ソックスを履いてきてしまったことに気づいた。5本指ソックスは私の中で…

余生(8)

※前回 余生(7) - 余生 オカダさんは無言の威圧で、私が観念するのを待っているようだったが、次の瞬間銃声が鳴って、オカダさんは背中から撃たれ、私の方へ倒れかかってきた。私は反射的に身をそらし、オカダさんの死体は畳に上に倒れた。流れ出た血が畳に染…

余生(7)

※前回 余生(6) - 余生 「本当ですって、なんも聞いてないです」 私は少し笑いながら、冗談っぽく言ってみた。しかし疑われて心外だという風も伝えたくて、最後まではっきりした口調で伝えた。そうしたら口の中が急に痛くなった。それは3日前に歯医者へ行っ…

余生(6)

※前回 余生(5) - 余生 すると、ドアの向こうから「誰かいるのか?」と声が聞こえ、ドアとは私が入ってきたガラス戸ではなく、右側の木の引き戸の方から聞こえた。そういえば下駄箱には黒い靴が詰まっていたことを思い出した。交流会は4時からの予定で、私は…

余生(1) - (5)

その朝私は久しぶりに母が死ぬ夢を見た。しかし夢だったので、やがて忘れてしまったので、幼い頃に見た方ので代用すると、母は風呂場で死んだ。風呂の排水溝から毒ガスが発生し、昼間だったので風呂桶に水は張っていなくて母は風呂掃除をしているところだっ…

余生(5)

※前回 余生(4) - 余生 後から数字の並びについて、私はそれはカレンダーではなく、フィボナッチ数だよ、と教えてもらった。 玄関の先は廊下になっており右側が広間となっている。襖を開ければ中に入れるが、そこから入ると上手に出てしまうので、注意しなけ…

余生(4)

※前回 余生(3) - 余生 オレンジ色の壁の、業務用スーパーの自動ドアをくぐると、そびえ立つように缶ビールのダンボールがメーカーごとに積みあげられており、私はそのダンボールのにおいを嗅いでいるうちに尿意をもよおした。この業務用スーパーは以前はゲー…

余生(3)

※前回 余生(2) - 余生 それから20年以上が経ち、私はヤナカの家に行くのは随分久しぶりだったので、流石に庭のゴルフコースはないだろうが、カップの穴の名残だとか、または完全にそれが消えてしまっても「この辺りに穴を掘ったよね」みたいな会話ができる…

余生(2)

※前回 余生(1) - 余生 その日は仲間たちと花見をしようということになっており、しかし前日までは時間などの細かいことは全く決めていなかったので、私は夕方から夜にかけてやるものと思っていた。前日に私が何時にする? とメールをすると、お昼でいいんじ…

余生(1)

その朝私は久しぶりに母が死ぬ夢を見た。しかし夢だったので、やがて忘れてしまったので、幼い頃に見た方ので代用すると、母は風呂場で死んだ。風呂の排水溝から毒ガスが発生し、昼間だったので風呂桶に水は張っていなくて母は風呂掃除をしているところだっ…

新しい小説「余生」連載開始のお知らせ

<a href="http://fktack.hatenablog.com/" data-mce-href="http://fktack.hatenablog.com/">余生</a>fktack.hatenablog.com 6月1日より、新しく小説の連載を開始しようと思います。タイトルは「余生」です。 更新スケジュールですが、今回は笑っていいとも方式でいこうと思います。毎週月曜から金曜の午後0時に更新します。お昼の12時です。それと、日曜…

「西門」を読んでくださった方へ

「西門」は、昨日の更新をもって、連載終了となりました。読んでくださった方にお礼を言いたいと思います。ありがとうございました。この小説は、およそ一年前に書きました。各記事のタイトルは、実際に書いた日にちです。ほぼすべて、会社の休み時間や空き…

2014/2/17

ところで5年になると3階の教室が使用できると書いたが、教室数の関係で1組だけは2階のままであり、1組にはかつて私をいじめた連中がたくさんいたので、いい気味だと思った。 (了) 第1回 2013/12/11 - 西門 2013/12/11 - 西門

2014/2/14

お母さんとベビーカーは、学校の門をくぐってすぐのポストのところに立ち、滑り台の山の方を眺めていた。ポストの脇からは滑り台の頂上がよく見えるようだった。 私はしばらくこの親子の様子を眺め、段々と不安になった。それは1度家に帰ってから、一緒に遊…